沖縄の染物・紅型とは?美しい伝統工芸品「琉球びんがた」

沖縄の染物・紅型とは?美しい伝統工芸品「琉球びんがた」

色鮮やかな琉球の美!沖縄の紅型(びんがた)

沖縄の伝統的な染色工芸「琉球びんがた」
色鮮やかで美しい琉球びんがたは、かつて王族や士族の着物や交易品として重宝された工芸品。
そんな琉球びんがたがどのように生まれたのか?その歴史や製作工程をご紹介します。


「琉球びんがた」とは?

琉球びんがたは、沖縄の伝統的な染色工芸。京友禅や加賀友禅、江戸小紋と並ぶ、日本の代表的な染物です。
「びんがた」は「紅型」と書き、「紅」は赤色ではなく色彩を、「型」は模様を意味します。紅型では華やかに植物や動物を描いたものが代表的。「琉球びんがた」の中でも深い青色の染物は「藍型(えしがた)」と呼ばれます。

「琉球びんがた」はどうやってできるの?

琉球びんがたは、とにかく工程がたくさん!
琉球びんがたは分業制で、工程ごとに熟練の職人さんが手がけます。美しい色や模様は職人さんの丁寧な手仕事によるものなのですね。
染めの技法は「型付け」と「筒引き」の二種類。「型付け」では型紙を使用し、「筒引き」ではフリーハンドで描きます。

琉球びんがたができるまで

  • 1.型彫り:「シーグ」と呼ばれる小刀を使用し、「突き彫り」で型を細かい模様から彫り始めます。
  • 2.型付け(かたづけ):ヘラで均一に防染糊を薄く塗り、型紙の彫られた部分を布に写しとります。
  • 3. 筒引き(つつひき):手描きの手法である「筒引き」の場合、木綿の筒袋に入れた防染糊を下絵の上に絞り出していきます。型を使用した手法より躍動感のある模様描写が可能です。
  • 4.色差し(配色):豆乳と糊を合わせた「豆汁(ごじる)」と呼ばれる液を、刷毛で引きます。顔料の定着だけでなく、滲み防止の効果もあります。
  • 5.刷り込み(2度ずり):顔料は定着しにくいため、2度ハケで色を刷り込んでいきます。
  • 6.隅取り(くまどり):色差しが終わった模様に中心からぼかしを入れる作業で、模様全体の立体感を引き出します。
  • 7.糊伏せ(のりふせ):糊伏せとは、模様の部分に防染糊をつける作業です。地染めの際に、糊をつけた模様の部分に色が入らないようにするために行われます。
  • 8. 地染め(じぞめ):水で薄めた糊をハケで引いてから、大きめのハケを使用して染料を引いていきます。藍型の場合は、藍壺につけます。
  • 9. 蒸し(むし):染料を定着させるため、高温の蒸し器で40分から1時間程度蒸し、その後は乾燥させます。また、蒸す代わりに色止め剤(薬品)を使用する場合もあります。
  • 10.水洗い:たっぷりのお湯あるいは水を使用して、薬品や糊を洗い流します。

「琉球びんがた」の歴史

琉球びんがたの歴史をのぞくと、沖縄の歴史が見えてきます。
琉球びんがたの始まりは14~15世紀。琉球王朝に到来したインドの更紗やジャワ更紗、中国の花布などの交易品、日本の京友禅から技法を取り入れて琉球びんがたが生まれたとされています。

琉球びんがたは琉球王府の手厚い保護のもと盛んに生産されました。王族・士族の衣装として愛用されるほか貴重な交易品となり、中国や江戸幕府へ献上されていたと言います。

三度の危機を乗り越えた復興

17世紀、薩摩の侵攻で型紙の多くが焼失。しかし衰退することはなく、18世紀頃までには現代の琉球びんがたの様式が確立されました。そして19世紀後期、琉球処分によって王府の庇護を失った琉球びんがたは衰退していきます。さらに第二次世界大戦での大きな被害の中で、びんがたの型紙や道具の多くを失いました。

戦後の物資不足をのりこえ、職人さんの懸命な研究のすえに琉球びんがたは再び沖縄の伝統的な染物として復興をとげます。昭和59年には「琉球びんがた」として国の伝統的工芸品に認定されました。

琉球王朝の繁栄と諸外国との交流がうかがえる琉球びんがた。
薩摩侵略に琉球処分、第二次世界大戦。歴史の中で何度も消えかけましたが、琉球びんがたを愛する沖縄の人々の手によって、今もその技は受け継がれています。

琉球びんがたと芹沢銈介

色鮮やかな琉球びんがたを見ていると、「あれ?芹沢銈介の作品に似ている…」と思うことがありました。それもそのはず。調べてみたところ、芹沢銈介に影響を与えたのも琉球びんがただったのです!

民藝運動をリードした染色家、芹沢銈介。彼が琉球びんがたと出会ったのは30代のこと。
「その模様、その色、その材料、こんな美しい楽しい染物以上の染物があるかと、夢のような思いでした」そのときのことをこう語っていたそうです。
琉球びんがたを知ることは、日本の染色のルーツをたどることでもあるのですね。

美しい琉球びんがたを暮らしに

かつては王族や士族の衣装として愛された琉球びんがた。
現代でも着物や帯が作られていますが、雑貨にも数多く使われています。バッグや巾着、ストール、カサ、風呂敷、ランチョンマット…などなど、日常使いしやすい雑貨もたくさん!
暮らしのアクセントとして、琉球びんがたを取り入れてみてはいかがでしょうか。色彩豊かな琉球びんがたがあると気持ちも華やぐことでしょう。

琉球びんがたは沖縄のお土産や、旅行中の手作り体験も人気。観光の際には工房見学してみるのもおすすめです。